2.地域発展につくした先人たち
産業を盛んにし倹約や貯金をすすめた 青方 光毅(あおかたこうき)さん
青方村農民の美風
 長崎県南松浦郡に、青方という村がある。海上に散らばっている島々のうちの1つの小島にすぎないため、土地はせまく人口も少ないけれども、風俗や習慣がよく人情が厚いことは、他の島はとても及ばないので、この村の名は遠くにもひろく知られている。

 この村の習慣の中で、特に目立つことは、人々が税金をよく納め期日に遅れないことである。このことは今始まったことではなく、数百年も昔からの伝統であって、他のところではなかなか見られないことである。村民たちは、みんなが普段から安心して生活を楽しめるのは、政治が行き届いているからであり、そのためには何より税金を納めることを怠ってはいけないと、心を合わせお互いに励まし合っている。

 世の中には、納税の義務があることを知っていても、怠けたりぜいたくをしたりして、そのつとめを果たしていない者も見受けられる。しかし、この村の農業をする人々は、よく働くと共に倹約をするというよい習慣がある。村中がよく農作業に励み、朝はまだ星が残っている頃に家を出て、夕方には月影を踏みながら家に帰るというほどである。
 このように、精一杯働くので穀物は豊かに実り、収穫も多いのにもかかわらず、なお、普段は質素にし倹約を守ってむだづかいをしない。

 特に、他の村からお金を借りることは、村が衰えるもとになるので、そういうことはしないようにしている。また、いろいろな災いにかかって思わぬ費用が必要なときは、村中の人が助け合ってやりくりをしている。

 このようにしているので、人々の生活は豊かになるとともに、協力の精神はますます固くなり、国につくす心もさかんになっている。

 青方村の人々の様子は、国民の手本ともいえるものである。